“積読”供養

溜まってしまった本を整理するため、“積読”に目を通すことにした。その記録。

『午後からはワニ日和』

『午後からはワニ日和』 似鳥鶏 著 文春文庫

午後からはワニ日和 (文春文庫)

 自分は、アレルギー体質もあって、ペットを飼うことができないのであるが、動物には興味がある方である。そんなわけで、本のタイトルに動物が入っていたりすると、ついつい手を伸ばしてしまう傾向がある。そして“積読”がまた1冊……。

 

 本作は、動物園を舞台にしたミステリ小説である。

 楓ヶ丘動物園の爬虫類館からイリエワニのルディが盗まれてしまう。現場には、怪盗ソロモンを名乗る張り紙が残された。推定される犯行時間は動物園の営業中。捜査は当然のことながら警察が担当するのだが、内部犯行の可能性が濃厚であり、さらに、様子のおかしな飼育員も……。

 

 動物園から動物を盗むという話は、実際に起こった事例があるようだ。

 国内の場合だと、ペットショップの経営者がペンギン、カピバラ、リスザルを盗んだという事件が九州で起こっている。

 いまだ収まらない紛争の現場でも起きていて、ロシア兵がウクライナ港湾都市ヘルソンの動物園からアライグマ、ラマ、ロバ、オオカミ、クジャクを盗んだという報道があった。アライグマを盗み出す際に撮影された映像がネット上にアップされたのだ。

 

 実例はあるものの、ワニ、である。外部の一般人が動物園からワニを盗むというのは、やはり無理がある。しかし、自身も飼育員である主人公は内部犯行説を信じたくない。そんな中、別の事件が起こってしまう。

 面白い流れである。ちょっとした動物ネタ、動物園ネタが散りばめられているのも、楽しめた。主人公らの行動の一部には無理な部分があるようにも思えるが、フィクションの範囲内ではあろう。

 シリーズもののようなので、“積読”がある程度整理できたら探そうかと思う。