“積読”供養

溜まってしまった本を整理するため、“積読”に目を通すことにした。その記録。

『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』

『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』 川上和人 著 新潮文庫

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (新潮文庫)

 先週(2023年2月15日)、恐竜の喉の化石が特定されたというニュースが報道された。アメリカ自然史博物館が2005年にモンゴルのゴビ砂漠で発見した約8000万年前(白亜紀)の「ピナコサウルス」という草食恐竜の化石の分析の結果だという。この研究チームには日本も参加、というか福島県立博物館の吉田純輝学芸員が中心になって調査していたようだ。

 化石とワニなどの爬虫類やダチョウなどの鳥類の標本100点以上とを比較し、形状などから、呼吸や発声の機能を持つ「喉頭骨」と結論付けた。鳥類との共通点が多く、発声するのに適した形だったとしている。

 鳥のように発声できた可能性がある、さらには鳴き声でコミュニケーションが取れた可能性があるということで、非常に興味深い話である。

 

 最近では、恐竜と鳥類の共通性という見解は普通に語られており、別段突飛な発想ではない。しかし、自分が子供のころは、恐竜は爬虫類で、比較されるのはトカゲでありワニであった。

 で、鳥類学者の立場から書かれた恐竜の本である。

 恐竜は、いくつかの幸運な例を除いて、基本的に骨の形態しか知ることができなかった。しかし、鳥が恐竜の一系統であるとなると、現生鳥類を調べることによって、恐竜の生活をより信頼性高く類推することが可能となるということである。

 実際、本作の中で、恐竜の鳴き声や体表の色なども、現生鳥類のそれらから推測する試みがなされている。2013年に刊行され2018年に文庫化された本であるから、先週のニュースは、実に10年以上経って、化石の特徴から恐竜の鳴き声に関して鳥類と比較することの妥当性が補強された形になったということだ。

 少しばかり受け狙いが過ぎる部分があるようにも感じるが、イラストや写真が豊富で分かりやすい。そして、恐竜研究の難しさに関して、鳥類学者の視点からの解説がたびたび入るのだが、こと恐竜に関して以前と比べて大幅に書きかえられている理由になるほど納得した次第である。