“積読”供養

溜まってしまった本を整理するため、“積読”に目を通すことにした。その記録。

『日本の美を求めて』

今週のお題「お花見」

 今ちょうど桜がほぼ満開の状態で、今週末は、自宅近くを歩くだけでお花見になると思う。今週のお題は「今年は、お花見しましたか?🌸」となっているが、飲食を伴うお花見は難しい分、純粋に桜の花を眺めることができそうだ。

 と思ったら、桜の花にライトアップだけでは飽き足らず、プロジェクションマッピングをやるというニュースがネットに出ていた。

 関係者には悪いのだが、本物の桜の美しさを邪魔する光害にしかなっていない気がする。

 

『日本の美を求めて』 東山魁夷 著 講談社学術文庫

日本の美を求めて (講談社学術文庫)

 1976年に第1刷が発行されたとなっており、「まえがき」の内容から、その前年に書かれた随筆と講演の書き起こし、ドイツ語による講演の邦訳と分かる。

 

 東山魁夷の桜の絵《花明り》は、1968(昭和43)年、60歳時に制作された代表作である。自分は、かつて長野県信濃美術館(現:長野県立美術館)の別館・東山魁夷館でこの絵を見たことがある。

 描かれているのは京都・円山の夜のしだれ桜。大きな丸い月は、桜を照らすのに十分な光を放っている。

 

 この絵の情景については、「一枚の葉」と題された随筆になっている。

 山の頂が明るみ、月がわずかに覗き出て、紫がかった宵空を静かに昇り始めた。花はいま月を見上げる。月も花を見る。この瞬間、ぼんぼりの灯も、人々の雑踏も跡かたも無く消え去って、ただ、月と花だけの清麗な天地となった。

 この絶妙なタイミングの巡り合せ。

 風景画家としての東山魁夷は、風景との出会いを大切にしていた。

 そして、その風景は、強すぎる人工の光や派手な色を被せてしまっては壊れてしまうだろう。

 やはり、自分としては、夜の闇の中から浮かび上がる桜の白さの幽玄さを感じ取りたい。