“積読”供養

溜まってしまった本を整理するため、“積読”に目を通すことにした。その記録。

『ホペイロの憂鬱』

ホペイロの憂鬱 JFL』 井上尚登 著 創元推理文庫

『幸せの萌黄色フラッグ ホペイロ坂上の事件簿 J2篇』 井上尚登 著 創元推理文庫

ホペイロの憂鬱

幸せの萌黄色フラッグ ホペイロ坂上の事件簿 J2編

 自分は、普段、スポーツ観戦どころか結果すら見る習慣がない。運動する習慣もなく、健康のためになるべく歩くようにしている程度だ。それなのに、こんな本が2冊も“積読”となっていた。

 おそらくカタールの前のロシア、下手するとその前のワールドカップの際に、一時的に日本中が青色に染まった感の空気に乗せられて買ってしまったのだろう。覚えていなかったので、調べてみたら、ロシアの前はブラジルだった。

 

 サッカーの話、というかサッカークラブを舞台としたミステリである。

 まず、ホペイロ自体よく知らない単語なので調べてみた。ポルトガル語の服を意味するroupaという言葉から派生したroupeiroで、「用具係」の意味。

 主人公がそのホペイロなのだが、選手のスパイクの手入れが本業で、本来は業務ではないユニフォームの洗濯など他の雑用も引き受けているという。やけにその辺を強調している。「用具係」とすると、ボール磨きでもしているようなイメージを持ってしまうが、どうも違うらしい。ちなみに、ネット情報では、ユニフォームの管理もホペイロの業務として上げられている。実は、1冊目の方の最後に本業の方の解説が載っているのだが、“実際とは少し異なる部分があるにせよ”、“ブラジルやスペインだとホペイロとは別に洗濯係がいる”としているので、微妙な感じなのかもしれない(つまり、当事者的には洗濯は別業務と考えているが、日本国内での実情では洗濯もやらざるを得ない)。

 で、「用具係」というより「雑用係」寄りのホペイロである主人公が、サッカークラブ内で起こる事件の解決という雑用を押し付けられる、という設定で話が進む。

 結論から書くと、競技としてのサッカーはもちろん、この聞き慣れないスタッフのことを知らなくても、普通に読める作品ではある。ただ、フィクションながら、裏方目線というか、いろんな役割の人たちが動いて、プロスポーツが成り立っているという図式も垣間見えた。

 カタールのワールドカップが終わって少し経った今、三笘選手の名前と顔だけは分かるようになったというレベルのやる気の無いニワカファンだが、本作を読んで、わずかながら、裏方スタッフについても知れたことは良かったと思う。