“積読”供養

溜まってしまった本を整理するため、“積読”に目を通すことにした。その記録。

『緑の英国・アイルランドのクルマ旅』

『緑の英国・アイルランドのクルマ旅 フランスからドーバー海峡を渡って再びフランスへ、小さなプジョーで1000㎞』 笹目二朗 著 枻文庫

緑の英国・アイルランドのクルマ旅―フランスからドーバー海峡を渡って再びフランスへ、小さなプジョーで10000km (エイ文庫 181)

 枻文庫は、【エイブンコ】と読むらしい。枻は、訓読みでは【かい】。舟を漕ぐ道具のことだ。と同時に、弓の歪みを直す道具である「ゆだめ」を指す漢字でもある。

 枻出版社という会社が出していた文庫ではあるのだが、趣味系というか、バイクやカメラ関係の本が多く、紙もちょっと高級な感じのシリーズで、小型のムック本という方が的確かもしれない。残念なことに、枻出版社は2021年2月に民事再生法の適用を申請している。負債57億8800万円。要するに潰れちゃったのである。

 だから、“積読”の中に残されていたこの本は、ある意味で貴重なものかもしれない。今後、他社から再出版されるような文庫本とは思えないからだ。10年くらい前の、日本にまだ余裕があった時代の本だなあ、という印象。紙の本が売れなくなってしまった今、こういう本を出そうというところは、まだ、あるのだろうか? 

 これは、もう暫くの間は、処分しない方がいいかな? サンリオSF文庫ほどの需要はないだろうが。

 

 肝心の内容であるが、ほぼ、タイトルそのままである。

 パリでレンタカー(プジョー207)を借り、カレーからフェリーに乗ってドーバー海峡を渡り、英国とアイルランドをドライブ旅行し、再びフランスに帰る、というものだ。ただ、フランスに戻ってからも10日以上かけて(途中で207を返却し、107に乗り換え)ドライブを続けており、実際、筆者はフランスの方が肌に合うような気がする、としている。

 2006年の5月末から6月末までの期間の記録なのだが、多数の写真が載せられ、走行距離と燃費計算、使った金額が細かく記されていて、今だったらYouTube動画にありそうな感じだ。一時期話題になったSEVの効果についても書かれているあたりは、時代を感じさせる。結局、SEVって何だったのだろうか? 車にも使える健康ネックレス?

 円安の影響が大きくて、さらには、英国のEU離脱で状況が変わっている部分も多いだろうことから、もはや実用書としての旅行ガイドではなくなっているだろうが、できたら、こんな海外旅行をしてみたいなという夢を見させてくれる本ではある。