『ロンドンはやめられない』
『ロンドンはやめられない』 高月園子 著 新潮文庫
著者の本業は英米文学翻訳家。
翻訳業以外にも音楽関係の記事やエッセイを執筆しているとのこと。
もともとは夫が仕事でロンドン駐在員となったことがきっかけでロンドンに居住し、20年以上になっているということらしい。
一般に考えられているような“海外駐在員の妻”。さらに盛ったキャラクターを作った上でのエッセイなのだろうが、極端というか、わざわざここまで不快感を上げる書き方をしなくても、というのが、正直な感想だ。
実際にロンドンで長年暮らしているからこその見解だったり、なるほどな考察があったりして、それなりに興味深い内容なだけに、もったいない。
特に、我が子の成功を喜ぶことができない層の話は、いまだに階級がしっかりと残っているイギリスらしい面を分かりやすく書いていたと思うし、クリスマスの前後に鬱状態になる人が多いという話は、意外な事情を知ることができた。
平成19年(2007年)に刊行された本を改題して文庫化されたものであるが、15年くらい前だと、こんな勘違いおばさん的なキャラクターの方が個性的と捉えられていたのだろうか? 本音を語っているという体の表現のつもりなのかもしれないが、釈然としない読後感が残ってしまった。