『僕は、そして僕たちはどう生きるか』

『僕は、そして僕たちはどう生きるか』　梨木香歩 著　岩波現代文庫

　梨木氏の綴る日本語が好きだ。凛として、美しい日本語だと思う。

　そのため、書店で未読の梨木氏の書籍を見つけると、購入し、そして、大抵は、間を置かずに読む。それなのに、この本は“積読”であった。

　理由は、おそらく、タイトルから、なんとなく嫌な予感がしたからであろう。数年前、漫画化されたことで話題になった某作品とタイトルが被っているのは、すぐに気が付いた。

　果たして、始めの数ページを読んだところで、自分の嫌な予感が当たっていたことが判明してしまった。主人公は、あだ名で呼ばれており、それは、“コペル”であった。梨木氏の作品でなかったら、たぶん、この時点で諦めただろう。結局、最後まで読んだのだが、正直、気分的にはモヤモヤとした感じが残った。

　パロディを書くような作家ではないし、これはパロディではないと思う。

　が、明らかに吉野源三郎の作品を意識している作品だ。

　なぜ、あえて、これを書いたのか？　

　梨木氏の綴る日本語が好きである故に、余計に、モヤモヤしている。