“積読”供養

溜まってしまった本を整理するため、“積読”に目を通すことにした。その記録。

『ターナー 色と光の錬金術』

ターナー 色と光の錬金術』 オリヴィエ・メスレー 著 藤田治彦 監修 創元社

ターナー―色と光の錬金術 (「知の再発見」双書)

 「知の再発見」双書シリーズの第128冊目。

 この「知の再発見」双書、どうも日本語版は2017年の第166冊目を最後に新刊は出ていないようだ。元ネタは、フランス・ガリマール社の「ガリマール発見叢書」(Découvertes Gallimard)。創元社東京創元社ではない。というか東京創元社の方がもともと創元社の東京支社だった……)が翻訳出版権を買い取る形で1990年から発刊してはいるのだが、本家フランスでは200冊以上が既に出されていて最終的には500冊以上になる予定という、生きている間には絶対揃わない壮大なシリーズだ。

 図版が多く大きさも手ごろなので、気になったテーマのものだけ買うことにしている。しかし、6年近く新刊が出ていないということは……。いや、創元社には頑張って欲しい。

 

 ターナーは、18世紀末に生まれた英国の画家である。

 現在でも英国の国民的画家と位置付けられ、2020年に出された20ポンド紙幣の裏面にはターナーの肖像と代表作の1つ『解体されるために最後の停泊地に曳かれていく戦艦テメレール号、1838年』が描かれている。『解体される~』はBBCラジオ4の番組企画で行われた投票で、英国国内にある絵画で最も人気の絵画に選ばれているそうだ。

 

 表紙に本文の抜粋が印刷されている。

 ヨーロッパの美術史に名を残す偉大な画家たちのなかでも、(略)ターナーは、きわめて例外的な存在である。非常に若くして画家として認められながら、晩年には人びとから理解されなくなり、あれほどの名声があったのに、後継者も生まれなかった。(略)彼の作品はつねに独自の道を歩み、(略)驚くべき方法でみずからの芸術を極限まで押し進め、一見、ヨーロッパ絵画の本質的な規範と縁を切ったかに見える作品を制作しつづけたのである。

 元ネタがフランスで発行された本で、監修者も書いているが、フランスにおけるターナー研究なので、英国人からは異論が出そうな気もする。

 なんだかんだで、ターナー自身の遺言をもとに、ロンドン・ナショナルギャラリーにはターナーの作品のみを展示するギャラリーが恒常的に設置されているし、さらには特定の絵画の展示場所に関しては、画家からの注文が忠実に守られている。


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 ※最初の方2:08から11:08

 

 フランス人から見たターナー

 印象派との関連については意外に少ない記載(どうも印象派の画家たちの一部で、自分たちがターナーの亜流とみなされることを嫌っていた側面もあるらしい)。フランス人はプライドが高そうだから、絵画後進国とみなしていた英国の画家の先進性を素直に認めにくかったのかもしれない。

 印象派以外でターナーを手本にした画家としては、フェリックス・ジアン、ジョン・マーティン、トマス・コール、フレデリックエドウィン・チャーチの名が挙げられていた。Wikipediaで調べてみたが、確かに、ターナーの何が描かれているのかはっきりと分かる時代の風景画に近い感じがした。