“積読”供養

溜まってしまった本を整理するため、“積読”に目を通すことにした。その記録。

『美しい椅子3』

今週のお題「メモ」

 今週のお題は、ふむふむ、メモメモ…📝、ということらしい。

 “積読”から拾い出し、順番に読み続けている『美しい椅子』シリーズであるが、前2冊の時にも書いたが、このシリーズ、モダンデザインの歴史において重要な多数の椅子の写真を集め、制作したデザイナーと共に簡潔な説明を付け、コンパクトにまとめたという点で、20年近く前の本でありながら今に至っても価値のあるシリーズだと思う。

 が、同時に、ミスが多い。

 文庫本171ページの本に、ざっと見て気が付いたミスをメモしてみようと試してみた。

 

『美しい椅子3 木の名作椅子』 島崎信+生活デザインミュージアム 著 枻文庫

美しい椅子〈3〉世界の木製名作椅子 (エイ文庫)

 シリーズ第3弾は木製の椅子に焦点を当てた内容となっている。木製の椅子といっても100%木だけで作られた椅子だけではなく、骨格が木製のものも集められている。

 デンマークの代表的デザイナー4人の椅子を扱った『美しい椅子 北欧4人の名匠のデザイン』、日本のデザイナー7人の椅子を扱った『美しい椅子2 にっぽんオリジナルのデザイン力』でも、多くの木製の椅子が載せられているので、一部内容に被る部分もあるが、前2冊では取り上げられなかったデザイナーの椅子を多数選んでいる。

 

 背が非常に高く独特の光沢を持った椅子《ヒル・ハウス No. 292》が印象に残るチャールズ・レニー・マッキントッシュ

 実は、自分は、この有名な椅子を知ってはいたが、直線的で左右対称な硬質な見た目から、何となく、金属製の椅子だと勘違いしていた。

 

 ヘリット・トーマス・リートフェルトの《レッド&ブルー No. 635》は、かなり奇妙な椅子である。

 1917年、オランダでは「デ・ステイル」という芸術運動が起きた。リートフェルトはその初期からのメンバーで、その特徴は、水平垂直の構造、赤青黄といった原色を用いるというもの。中心的人物ピート・モンドリアンの作品が「デ・ステイル」の平面構成であるとしたら、リートフェルトの《レッド&ブルーチェア》は「デ・ステイル」の立体構成作品と言える。

 しかし、この17点の木のパーツによる椅子は、フレーム部分は水平垂直に構成され、背もたれと座面のみ板を斜めに配置したもので、なんとなく座り心地は微妙そうな見た目だ。

 この椅子、2005年に「美の巨人たち」で取り上げられていて、番組制作スタッフも気になったのだろう、番組の最後にナレーション担当の小林薫氏が実際に座ってみるシーンが入れられていた。

 機会があったら、試しに座ってみたいと思う。

 

 マッキントッシュリートフェルト以外に、ジオ・ポンティ、フランコ・アルヴィニ、ヘンリー・ヴァン・デ・ヴェルデアドルフ・ロース、オットー・ワグナー、マックス・ビル、エゴン・アヤマンエリック・グンナール・アスプルンド、カール・マルムステン、オーケ・アクセルソン、ヴィコ・マジストレティ、ヨゼフ・ホフマン、コーレ・クリント、オーレ・ヴァンシャー、シグード・レッセル、グスタフ・スタックレー、フランク・ロイド・ライト、ジョージ・ナカシマ、アルヴァ・アアルト、チャールズ・イームス、ブルーノ・マットソン、ペーター・ヴィッツ&オーラ・ミュルガード・ニールセン、ペーター・オプスヴィック、ルド・チューエセン&ジョニー・ソーレンセン、シャルロット・ペリアン、イルマリ・タピオヴァラ、ヴェルナー・パントン、ナナ・ディッツェルが登場している。

 

 著者は、モダンスタイルの椅子のルーツを《明代の椅子》、《ウィンザーチェア》、《シェーカーチェア》、《トーネットチェア》の4つに分類しているのだが、それぞれについても解説が入っている。

 

 で、以下は、目に付いたミス。

 P24、〈カーサ・カルベッのためのアームチェア〉

 P39、Erik Gunner Asplundの表記を、エリック・Eアスプルンド

 P47、「マジストレティ」と「マジストレッティ」の2表記。統一していない。

 P128~133、「イームス」と「イームズ」の2表記。統一していない。

 P134、「マトソン」と「マットソン」の2表記。統一していない。

 P138~139、「ヴィット」と「ヴィッツ」の2表記。統一していない。

 P146~149、「ルド・テューエセン」と「ルィ・チューセン」の2表記。統一していない。「ジョニー・ソーレンセン」と「ヨニィ・ソーレンセン」の2表記。統一していない。

 P156~159、「ナンナ・ディッツェル」と「ナナ・ディッツェル」の2表記。統一していない。さらに、「現在、コペンハーゲンの中心部に事務所を構えて活動中。」という説明を書いていながら、生没年を「(1841-1918)」と表記している。気になったので、調べてみたら、正しい生没年は、(1923- 2005)。この本が刊行されたのは2004年なので、存命中の人を亡くなっているように表記した、という致命的なミスである。

 さらに、目次と年表に書かれた人名表記が、本文中とさらに統一されていないというミスもある。

 誤字・脱字のレベルでこれだけミスがあるので、本文の内容に関しての間違いも、いろいろあるのではないかと……。

 

 1つの椅子を分かりやすくするために、正面、横、後ろ、斜めの写真を並べたり、実際に使われている部屋に置いてある形での写真を載せたりで、写真の使い方はかっこいい本なのに、どうしてここまで雑にしてしまったのだろう?

 枻出版自体が潰れてしまったし、20年近く前の本なので、この本が再販される可能性は極めて低いと思われるが、もし、再販が叶うのなら、ゲラチェックはきちんとして欲しいものである。