“積読”供養

溜まってしまった本を整理するため、“積読”に目を通すことにした。その記録。

『美しい椅子』

『美しい椅子 北欧4人の名匠のデザイン』 島崎信+生活デザインミュージアム 著 枻文庫

美しい椅子―北欧4人の名匠のデザイン (エイ文庫)

 副題に、“北欧の”と入っているが、4人ともデンマークの椅子デザイナーである。

 デンマークで思い浮かぶのは、アンデルセンであり、ロイヤルコペンハーゲンであり、レゴブロックであり、デニッシュパンである。

 が、実は、デンマークは家具でも有名らしい。

 本書では、ハンス・J・ウェグナー、アルネ・ヤコブセンボーエ・モーエンセン、フィン・ユールの4人の椅子が取り上げられている。

 

 ウェグナーがデザインした椅子は500種以上らしい。

 かなり有名なものもあり、J・F・ケネディがテレビ討論会で座った椅子もウェグナーの《ザ・チェア(PP-501)》と呼ばれる椅子。

 世界で最も売れた椅子と言われる《Yチェア(CH-24)》。

 イギリスのウィンザーチェアを元にデザインした《ピーコック・チェア(PP-550)》や《イージー・チェア(PP-112)》、《サークル・チェア(PP-130)》。

 3本脚で背の形がユニークな《ヴァレット・チェア(PP-250)》。

 モーエンセンとは友人としての付き合いもあったようで、モーエンセンの息子ペーターの名付け親となり、誕生祝いに子供家具《ペーターズ・テーブル&チェア》を贈っている。この組み立て式の子供家具が実に良い。

 

 家具デザイナーだけでなく建築家として有名なアルネ・ヤコブセン

 脚に金属パイプ、背と座面に成形合板を用いた椅子は、なんとなく学校の椅子を彷彿とさせるが、《アント・チェア》にしても《セブン・チェア》にしても曲線がお洒落だ。

 建築家としてのヤコブセンの業績についても簡単にまとめられているが、なかなか難しいタイプの人物だったようだ。

 若い時代の代表作《オーフス市庁舎》。このモダン建築を巡っては、地元の保守層と相当に揉めたらしい。伝統的な時計台を望む声に渋々同意したものの、塔の中途半端な位置に時計を付けたという話が残っている。

 ちなみに、このオーフス市はデンマーク第2の都市で、以前に取り上げた『アンデルセンください』という本にも登場していた。モダン建築が目立つ中心部と郊外のオールドタウンの比較がされていて、《オーフス市庁舎》のスケッチもばっちり載せられていた。

 

 癌性脳腫瘍により58歳という若さで亡くなったボーエ・モーエンセン

 したがって、載せられた椅子も他の3人の椅子より数は少ない。が、シンプルで暖かみの感じられるデザインの椅子は、とても座り心地が良さそうだ。

 

 そしてフィン・ユール。

 著者も書いているが、後ろ姿の曲線が美しい椅子が多い。

 当初は、デンマーク国内での評価はあまり高くなく、むしろアメリカで人気が出てから逆輸入的に評価されるようになったという。

 こういうのは日本ではよく聞く話だが、他国でも同じようなことはあるらしい。

 

gunyanyanya2.hatenablog.jp